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NHKネタドリで全国放送 ―江東区千石データセンター問題と、国・専門家・業界が示した「自治体が動くしかない」という結論

この記事のポイント

  • 本日5月15日、NHK「首都圏情報ネタドリ!」で江東区千石3丁目データセンター計画が全国放送で具体的に取り上げられた。 マンションとの距離3.7m、A重油120万L備蓄、住民の懸念が、全国に放送された。
  • 番組内で国土交通省は公式コメントとして「データセンターは自治体が地域の実情に応じ、条例などで定めることが合理的」と表明した。 国の所管官庁が「自治体の役割」と明言した。
  • 専門家、業界団体、他自治体担当者の発言も、すべて同じ方向を示した。 「自治体が条例を作って場所を制限するしかない」「事業者の説明責任が果たされていない」「ゾーニングが大事」――立場の異なる関係者が、揃って「基礎自治体が動くべき」という結論に至っている。
  • 千葉県印西市は既に動き始めている。 駅前3エリアでデータセンター建設を禁止・制限する条例改正の方針を打ち出した。動く自治体は、既に動いている。
  • 私は4月のブログで既にこう書いた。「都のメッセージはこうです。『ガイドラインはお願いベースで出した。実効性あるルールが必要なら、区市町村で作ってください。』」――この指摘が、1ヶ月後、国・専門家・業界・他自治体の発言で公式に裏付けられた。江東区千石3丁目の建築確認申請最短日は6月7日。江東区が動かない理由は、もうない。

はじめに:NHKが映した千石3丁目

本日5月15日19時30分から放送された、NHK「首都圏情報ネタドリ!」――「データセンターが家の近くに? 建設ラッシュ どう共存」。首都圏で約200カ所の建設が進むデータセンターの現状と、各地で起きている住民とのトラブルを特集した30分番組です。

番組の中で、江東区千石3丁目のデータセンター計画が、首都圏の代表事例として取り上げられました。

「東京江東区。マンションが立ち並ぶ住宅エリアの真ん中に高さ50mのデータセンターが建設されようとしています」(番組ナレーション)

住民の声も放送されました。

江東区千石3丁目のデータセンター建設予定地。2026年5月15日放送 NHK「首都圏情報ネタドリ!」より

「今こうしているそこの端からマンションとの敷地の間まで、ここには駐車場になっているところが基本的に全部、もうすぐ下のところに重油タンクを120万リットル置きます、という風な話」

「未だにちょっと私たちのマンションにどの程度騒音だったりとか、あと温度ですね、排熱の問題だったりとかもどの程度影響が来るっていうのかが全く分かっていない状況というところがあるので、その辺りがはっきりしないことにはというところが一番困っている」

千石3丁目で起きていることが、首都圏の代表的なデータセンター問題事例として、全国に放送された。これは江東区にとって、対応を急ぐべき政治的状況の変化です。

そして番組は、この問題を解決するために何が必要かを、国、専門家、業界団体、他自治体の発言を通じて整理しました。結論は一貫して「自治体が動くしかない」でした。

国土交通省の公式コメント

番組内で、国土交通省はNHKの取材に対し、次のように回答しました。

「データセンターと言っても、施設によって設備が異なる。ほとんどの施設で周辺への悪影響は確認されていないため、建築の基準を一律に厳しくすることは難しい。自治体が地域の実情に応じ、条例などで定めることが合理的と考えています。

これは決定的に重要な発言です。

国の所管官庁である国土交通省自身が、データセンター規制について「国は一律基準を設けない」「自治体が条例で対応するのが合理的」と公式に表明しました。

これが意味することは明確です。データセンターの周辺生活環境への影響への対応は、国の役割ではなく、自治体の役割であると、国自身が位置付けた。

これまで「規制は国や東京都の責任の範疇」「区の権限の外」といった整理がなされることもありました。しかし、国土交通省が公式に「自治体の条例で対応するのが合理的」と述べた以上、自治体が動くことは国の方針に沿った行動です。江東区が動かない正当な理由は、これで一つも残らなくなりました

専門家・業界団体・他自治体も同じ方向

国土交通省だけではありません。番組に出演した専門家、業界団体代表、他自治体の担当者――立場の異なる関係者が、揃って同じ結論を示しました。

専門家・佐藤一郎氏(データセンター研究の第一人者)

「住民や自治体の方からしてみると、この町のこの場所は例えば住宅、またこちらは商業地域という風にやっぱりご希望があると思います。同様にデータセンターもここはいいけれどもこちらは駄目というところがありますので、ところがあの国の法律ではですね、データセンターというものは建築基準法的に定められていないところがあって、コントロールができないんですね。ですから自治体の方で条例を作って場所を制限するということになってるんだと思います

専門家は明確に「自治体が条例を作るしかない」と述べました。さらに国主導の必要性も指摘しています。

「やっぱり国が主導すべきですし、各省庁である種もみ合い状態になっていますので、やはりデータセンターの事業を所管している経済産業省がですね、他省庁と調整して、住民の方が安心できるその基準、そしてその事業者の監視・監督が求められると思います」

「国が主導すべき」と言いつつ、現状は「自治体が条例を作るしかない」――これは国の動きを待っていられないという現実認識です。

業界団体代表(日本データセンター協会・JDCC)

業界団体は5月、事業者向けガイドラインを公表しました。その理由を、業界団体代表は次のように語っています。

説明責任を果たしていないことが多いなという風に考えています。このまま行ってしまうとですね、やはりデータセンターは良くないものじゃないかと思われかねない。データセンターが与える影響を可視化し、明確にお伝えできるようにしたいという風に考えてるんです」

業界団体自身が「事業者の説明責任が果たされていない」ことを認めている。これは住民の懸念が事業者の対応不足に起因するという認識を、業界が公式に表明したものです。

千葉県印西市の自治体担当者

データセンター集積地として知られる印西市は、住民の懸念を受けて既に動き始めています。

「地域の方との共存というところにおいては、一つはゾーニングというところが大事。法令なのか、ガイドラインなのかというところはあるでしょうが、一定、国の方でも何らかの検討を進めていただけるとありがたい」

印西市は自治体として動きながら、国にも検討を求めている。「自治体は動く、ただし国も動いてほしい」という二重のメッセージです。

立場の異なる関係者が、揃って同じ結論

国土交通省(規制の所管官庁)、佐藤氏(中立の専門家)、JDCC(業界団体)、印西市(他自治体)――立場も利害も異なるこの4者が、揃って同じ方向を示した。

「自治体が動くしかない」「事業者の説明責任を担保する必要がある」「ゾーニングが必要」――これは、もはや一個別議員の主張ではなく、社会的コンセンサスです。

印西市は既に動いている

番組の中で、最も衝撃的な事実として紹介されたのが、印西市の動きです。

「印西市では、一部のエリアの都市計画について、データセンターの建設を禁止する案を公開しました。ニュータウンとして開発され、住宅地が多い駅前のエリア。地権者などと話し合い、データセンターの立地を認めない方針を示しました。さらに別の2つの駅前も条例を改正し、制限する方向で検討しています

印西市は、データセンター集積地として知られ、市の固定資産税収が5年間で約100億円増えたデータセンター誘致の先進自治体です。その印西市が、住民の声を受けて、条例改正でデータセンター建設を禁止・制限する方向に動いた。

しかも、住民からは建築確認の取り消しを求める訴訟まで起きています。

「データセンターの集積地、千葉県印西市です。3月、住民たちがデータセンターの建築確認の取り消しを求める訴訟を起こしました」

データセンター誘致で利益を得てきた印西市ですら、住宅地での問題を放置できなくなっている。動く自治体は、既に動き始めています。

江東区と印西市の対比は鋭い問いを投げかけます。「印西市は条例改正で動き始めた。江東区はどうするのか」。

4月の本ブログで既に指摘していた

私は、本日5月15日のNHK報道よりも1ヶ月以上前、4月2日の本ブログで以下のように指摘していました。

4月2日記事「東京都がデータセンターのガイドラインを公表 ― 義務規定ゼロ、問われる江東区の独自ルール」から引用します。

「都は『推進』と『お願い』までしかやらない。であれば、現場で実効性を持たせるのは、基礎自治体=区の役割だ」

「都のメッセージはこうです。『ガイドラインはお願いベースで出した。実効性あるルールが必要なら、区市町村で作ってください。』これは、都から区への宿題とも言えます」

「都がこう明記した以上、区が『都もお願いベースだから』と現状維持を続ける理由はなくなりました。むしろ、都のガイドラインが出たことで、区が独自ルールを作る根拠がはっきりしたと言えます

1ヶ月前に書いたこの指摘が、本日のNHK報道における国土交通省、専門家、業界団体、印西市の発言によって、公式に裏付けられた形になりました。

「基礎自治体が動くしかない」 ―これは私の意見ではなく、国・専門家・業界・他自治体が一致して示した社会的コンセンサスです。

江東区千石3丁目で起きていること

ここで、江東区千石3丁目で何が起きているかを、改めて整理します。

  • 規模:高さ50m、12機合計35MWの非常用ガスタービン発電機(1機あたり約2.92MW)、A重油120万Lの地下備蓄
  • 稼働:24時間365日。非常用発電機は最大48時間の連続稼働を想定
  • 立地:最短離隔3.7mで隣接マンション3棟(ジースクエア596戸、プレシス東陽町35戸、ハイラーク東陽町31戸、計663世帯約1,500人)に直接隣接
  • タイムリミット:建築確認申請の最短日は2026年6月7日

これはまさに、国土交通省が言うところの「地域の実情」です。住宅密集地に、これほどの規模のデータセンターが建つ事例は、首都圏でも稀です。条例で対応すべき事案として、これ以上明確なものはありません。

京都府の事例 ―データセンター稼働後に何が起きるか

番組では、もう一つ重要な事例が紹介されました。京都府内のデータセンターの事例です。

「これは3年前に京都府内のデータセンターで撮影された映像。非常用発電機を試運転した時のものです。住民は煙や騒音に今も悩まされていると言います」

非常用発電機の試運転で、住民が3年経った今も煙と騒音に悩まされている。これは仮想の懸念ではなく、既に起きている現実の被害です。

千石データセンターで稼働するのは、ガスタービン12機合計35MW。試運転は月1回程度を想定。住宅密集地で、京都府の事例より大規模な施設が稼働した場合、何が起きるのか ―誰にも分かっていません。報告仕様も第三者検証も稼働後モニタリングも、現行制度には用意されていないからです。

江東区がやるべきこと

本来、この問題は国や東京都がルールを作るべき問題です。本日の国土交通省コメントも、現状を是とするものではなく、「国が一律基準を作るのが難しい」という限界を述べたものです。専門家・佐藤氏も「国が主導すべき」と明言しています。

しかし、現実に間に合うのは、自治体の取り組みしかありません。国の法令改正には数年単位の時間がかかります。都条例の改正も同様です。それを待っている間に、千石データセンターは確認申請が下り、工事が始まり、稼働を開始します。

そして、国土交通省自身が「自治体が条例などで対応するのが合理的」と公式に表明した。これは国が「自治体に責任を渡した」のではなく、「現状の制度配置の中では自治体の役割である」と整理した結果です。江東区が動くことは、国の方針に沿った行動なのです。

6月7日までに残された時間は限られていますが、区がやれることがなくなったわけではありません。

一つは、要綱の運用を踏み込ませることです。協定書の締結を建築確認申請の前提条件とする運用、その協定書に報告仕様・第三者検証・稼働後モニタリングを盛り込ませる運用。これは要綱の文言改正を経ずに、区の指導要綱の運用として実現できる範囲です。

もう一つは、要綱の文言そのものの改正に着手することです。印西市が条例改正で動き始めたように、江東区も区長権限で進められる手続きの範囲で、条文の整備を始めることは時間的に不可能ではありません。

そして、千石データセンター問題を通じて必要性が明確になった以下の3点を、要綱の運用ないし改正で盛り込むべきです。

  1. 報告仕様の標準化 ―― 騒音・振動・排熱・排ガス・低周波音について、どの気象条件で、どの測定方法で、どの形式で報告するかを区が定める
  2. 第三者検証の導入 ―― 事業者の自己評価ではなく、独立した専門家がシミュレーションの前提条件と結果を検証する仕組み
  3. 稼働後モニタリングの制度化 ―― 建設前の説明だけで終わらせず、稼働後の実測値を継続的に確認・公表し、想定との乖離があれば是正する手順を事前合意

これらは規制ではありません。住民が現状で抱えている不安 ―「ガスタービン12機が住宅地3.7mで何を出すのか、誰にも分かっていない」―を解消するために、判断材料を作る仕組みです。

6月7日というタイムリミット

千石データセンターの建築確認申請の最短日は、2026年6月7日です。

5月7日に東京都中高層建築物条例の標識に切り替わり、その30日後から確認申請が可能になります。確認申請が下りる前にしか、区の指導要綱を実効的に運用する経路は機能しません。

5月30日に都条例ベースの説明会が予定されており、これが建築確認申請前の最後の説明会となる可能性が高い局面です。ここまでに区が運用または改正の方向性を示せなければ、千石データセンターは住民の懸念が解消されないまま着工することになります。

そして、千石データセンターで起きていることは、今後のすべての都市型データセンター計画の前例になります。要綱が掲げる「話し合い」「良好な近隣関係」が、形式的な手続きの履行で「達成された」と整理される前例。これを残してよいかが、今問われています。

おわりに

本日のNHK報道で明らかになったことは、シンプルです。

  • 国土交通省は「自治体が条例で対応するのが合理的」と公式に表明した
  • 専門家は「自治体が条例を作るしかない」と述べた
  • 業界団体は「事業者の説明責任が果たされていない」と認めた
  • 印西市は条例改正でデータセンター建設を制限する方向に動き始めた

国・専門家・業界・他自治体、すべてが同じ方向を向きました。

千石3丁目データセンター計画は、NHKという公共放送で全国に問題提起されました。この問題が「江東区の中だけの問題」だった時期は、もう終わっています。

千石3丁目の663世帯約1,500人の区民の生活環境を、6月7日までに守る仕組みを作れるのは、現実的に江東区だけです。国の法令改正を待っている時間はありません。区民の生活環境を守ることは、基礎自治体である江東区の本来の役割です。

残された問いは、ひとつだけです。

江東区は、区民の生活環境を守るために動くのか、動かないのか。

国の所管官庁が「自治体の役割」と明言した今、江東区が動かない正当な理由はもうありません。


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