江東区議会議員 中島雄太郎

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江東区の学童きっずクラブに入れない ―待機(保留)児童が1年で3倍、43人になった構造的理由

この記事のポイント

2026年第二回区議会定例会の防災・まちづくり対策特別委員会(マンション建設に伴う学校・保育所・学童クラブなど、公共施設の状況が報告される委員会です)で、私は江東区の学童保育「江東きっずクラブB登録」の保留児童(利用を希望しながら入れずにいる子どもたち)について質疑を行いました。

共働き世帯にとって、放課後の子どもの居場所は切実な問題です。議会での質疑を踏まえ、区民の皆様にご報告します。

  • 江東きっずクラブB登録(学童クラブ機能)の保留児童は、令和8年5月1日時点で43名。前年の13名から、1年で30名も増えている。 放課後の預け先を求める家庭が、それだけ「入れなかった」ということを意味する。
  • 保留が生じる背景には、構造的な理由がある。児童数が多い学校ほど、教室に余裕がなく、きっずクラブの定員を増やせない。 子どもが多い地域ほど需要も高いのに、まさにその地域で、受け皿が広げられないという、ねじれた構造になっている。
  • 区は、放課後に空く教室を時間帯で活用する「タイムシェア」で対応している。これは有効な工夫だが、あくまで学校の中でのやりくりだ。きっずクラブに必要なのは、特別な設備ではなく、基準を満たす「空間」だけ。 ならば学校の教室に限らず、区が持つ施設全体を見渡して活用を考える発想の転換が要る。私はその視点で、引き続き議会で問うてまいります。

1年で30名増えた「保留児童」

まず、いま何が起きているかをお伝えします。

共働き家庭が放課後から夕方まで子どもを預ける「江東きっずクラブB登録」 ―学童クラブの機能を持つこの制度で、利用を希望しながら入れなかった「保留児童」が、令和8年5月1日時点で43名にのぼっています。

問題は、その増え方です。前年の保留児童は13名でした。それが1年で43名へ、30名の増加です。3倍以上に膨らんだ計算になります。

保留児童とは、単なる数字ではありません。その一人ひとりの背後に、「放課後、子どもをどこに預ければいいのか」と悩む家庭があります。預け先が見つからなければ、保護者は働き方を変えざるを得ないかもしれない。30名増という数字は、そうした家庭が1年で30世帯分、新たに生まれたということです。

保育園では「ゼロ」を目指すのに、なぜ学童は

ここで、一つの問いが浮かびます。同じ「働く親が、子どもの預け先を確保できるか」という問題でありながら、保育園と学童とでは、区の向き合い方に差があるのではないか、という問いです。

保育園の待機児童について、江東区は「ゼロ」という明確な目標を掲げ、令和4年度から4年連続でゼロを達成してきました。かつては待機児童が数百人規模にのぼった時期もありましたが、区が施設整備などに資源を集中して取り組んだ結果、ゼロにまでこぎつけた。これは評価すべき成果です。

もちろん、この「ゼロ」は国の定義に基づくもので、第一希望の園に入れず育休を延長した家庭などはカウントされないため、実態を完全には反映していないという指摘があることも承知しています。それでもなお、区が明確な目標を掲げ、本気で取り組んできたことは間違いありません。

では、学童はどうでしょうか。保育園と同じように、働く親にとって、放課後の子どもの居場所は切実です。にもかかわらず、学童の保留児童について、「ゼロを目指す」という明確な目標が掲げられているようには見えません。保育園では「ゼロが当然」とされ、学童では保留があっても「順番待ち」として受け止められる。同じ問題に、なぜこれほどの温度差があるのか。

制度上、保育園と学童とでは、自治体に課された責任の重さが異なるのは事実です。しかし、区民である保護者から見れば、どちらも「働き続けるために、子どもを安心して預けたい」という同じ願いです。保育園で「ゼロ」を本気で目指してきた区が、その同じ本気を、なぜ学童にも向けないのか。 私は、そこを問いたいと考えています。

なぜ、保留児童が生まれるのか

では、なぜ入れない子どもが出てしまうのか。ここに、構造的な理由があります。

きっずクラブB登録の定員 は、児童一人あたり1.65平方メートル以上の面積を確保するという基準に基づいて、各施設で算定されています。つまり、定員は「どれだけの広さを確保できるか」で決まります。広さが確保できなければ、定員は増やせません。

そして、その広さ=場所を確保できるかどうかは、学校の教室に余裕があるかどうかにかかっています。ここで、ひとつのねじれが生じます。

区が公表している学校施設の資料と、きっずクラブの資料を照らし合わせると、その構造が見えてきます。児童数が多い学校では、そもそも普通教室が児童でほぼ埋まっており、収容対策が必要とされている学校も少なくありません。

教室に余裕がない。すると、きっずクラブに回せる場所もない。実際、複数の学校では、きっずクラブB登録の入会可能数と登録数が一致し、定員いっぱいまで埋まっています。これ以上は、場所がないから入れられない、という状態です。

江東きっずクラブB登録(学校内)の状況。黄色は入会可能数と登録数が一致し、定員まで埋まっているクラブ(区資料「施設状況の公表について」〔令和8年6月25日・防災・まちづくり対策特別委員会 資料12〕よりハイライトは筆者)

児童数が多い地域は、当然、放課後の預け先を必要とする家庭も多い。需要が高い。ところが、まさにその児童数の多さゆえに教室が埋まり、きっずクラブの受け皿を広げられない。 需要が最も高いところで、供給を増やせない。この構造が、保留児童を生む根っこにあります。

区全体では「空き」があるのに、入れない

ここで、意外に思われるかもしれないデータをお示しします。

区の資料によれば、きっずクラブB登録の入会可能数は、学校の中のクラブと学校の外のクラブを合わせて、区全体で6,551名分。これに対して、登録している児童は5,193名です。つまり、区全体を合計すれば、1,300名分を超える「空き」が存在する計算になります。空きがこれだけあるのに、43名の子どもが入れない。一見、矛盾しているように見えます。

しかし、ここにこそ、この問題の本質があります。空きが、子どものいる場所にないのです。

学童は、子どもが放課後に、自分の足で通える場所でなければ意味がありません。基本的には、通っている小学校の中のクラブか、そのすぐ近くの施設です。児童の多い学校のクラブが定員いっぱいでも、遠く離れた地域のクラブに空きがあっても、その子の預け先にはならない。実際、資料を見ると、定員まで埋まりきっているクラブは児童数の多い地域に集中し、大きな空きは、それとは別の場所に偏っています。

区全体の「総量」では足りているように見えても、子どもがいる場所という「配置」で見ると、足りていない。保留児童43名という数字は、量の不足ではなく、需要と受け皿の場所のミスマッチから生まれているのです。

そして、この資料はもう一つ、大事なことを教えてくれます。学校の外にあるクラブでも、子育て世帯の多い場所にあるものは、定員のほぼいっぱいまで埋まっているのです。つまり、学校の外の施設であっても、需要のある場所にありさえすれば、受け皿としてきちんと機能し、実際に選ばれている。このことは、後ほど述べる「学校の中だけで考えない」という視点に、確かな裏づけを与えてくれます。

区の対応 ―「タイムシェア」という工夫

この問題に、区が手をこまねいているわけではありません。

委員会で保留児童への対策を質したところ、区からは、これまで小学校の増改築の際に施設を確保してきたことに加え、新たな取り組みとして「タイムシェア」を進めているとの答弁がありました。

タイムシェアとは、きっずクラブ専用の部屋を新たに用意するのではなく、普段は授業で使っている普通教室や特別教室を、児童が下校して空く放課後の時間帯だけ、きっずクラブとして活用する方式です。場所そのものを増やすのではなく、時間帯で融通する、という発想です。区は、これを「現在、非常に有効な手段」と位置づけていました。

来年度以降の見込みについても質しましたが、区は、このタイムシェアを軸に、保留児童が発生している学校の校長と調整しながら、保留の縮小に努めていきたい、との考えを示しました。

限られた条件の中で、空いている時間と場所を最大限に使おうというこの工夫は、有効なものだと評価します。何もしなければ、保留児童はさらに増えていたかもしれません。

しかし、それは「学校の中だけ」の発想

その上で、私は考えます。タイムシェアは有効ですが、それはあくまで「学校の中」でのやりくりです。

そして、この方式にも限界があります。タイムシェアが成立するには、放課後に空く教室が必要です。しかし、児童数が多く、教室がフル稼働に近い学校ほど、放課後に空く教室も限られます。つまり、一番受け皿を必要としている学校ほど、タイムシェアで確保できる余地も小さい。根本的な解決には、なりきらない可能性があるのです。

また、タイムシェアは、日々使う場所が学校の状況に左右される仕組みでもあります。子どもたちが毎日過ごす居場所として考えたとき、これは小さくない論点を含んでいます。使う部屋が定まっていてこそ、避難の動線や危険箇所の把握といった安全管理は積み上がり、見守る側の目も行き届きます。安全の面でも、子どもが安心して過ごせる環境という面でも、安定して使える決まった空間があることの価値は、決して小さくないはずです。

必要なのは「空いている場所」 ―学校の外に目を向ける

ここで、発想を変える必要があると考えます。

きっずクラブB登録に必要なのは、特別な設備ではありません。国が定める、児童一人あたりの面積の基準を満たす空間があれば、定員を増やすことは可能です。必要なのは、ハードとしての「空いている場所」だけなのです。

だとすれば、対策を「学校の空き教室」の中だけで考える必要は、本当にあるのでしょうか。区は、学校のほかにも、数多くの公共施設を持っています。所管の縦割りや、これまでの前例にとらわれず、区が持つ施設全体を見渡して、基準を満たす空間はないかを柔軟に探る。そうした発想の転換があれば、打てる手は、まだ残されているのではないでしょうか。

役所の内部では、「これはこの部署の施設だから」「この施設はこういう目的のものだから」という区切りが、しばしば発想の壁になります。しかし、区民から見れば、同じ江東区の施設です。子どもの放課後の居場所という、これほど切実な需要に応えるために、その壁を越えて知恵を絞ることは、できるはずだと考えています。

子育て世帯が住み続けられるまちのために

江東区は、人口が増え続けているまちです。子育て世帯に選ばれ、子どもが増えている。それ自体は、喜ばしいことです。しかし、増えていく子どもたちの放課後の居場所が追いつかなければ、「子育てしやすいまち」という看板は、揺らいでしまいます。

私自身、共働き家庭の一員として、放課後に子どもが安心して過ごせる場所があることの、ありがたさと切実さを、日々実感しています。だからこそ、この問題を他人事として片づけることは、どうしてもできません。学童に入れずにいる43名の子どもと、その家庭の不安は、決して他人の話ではないのです。

保留児童の30名増は、その黄色信号だと受け止めるべきだと考えます。タイムシェアという当面の工夫を進めつつ、その先を見据えて、区が持つ施設全体を活用する柔軟な発想で、受け皿を広げていく。この点について、私は引き続き、具体的な提案を持って、議会の場で問うてまいります。

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