江東区議会議員 中島雄太郎

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江東区千石データセンター ―区はどこまで動くのか。区長が明言した「協会への働きかけ」とは

この記事のポイント

  • 千石データセンター問題の根っこには、「制度が現実に追いついていない」という構造があります。 35MW規模の非常用発電機の排ガスにすら、1987年の例外規定がそのまま残り、大気汚染防止法の基準が適用されません。新しい施設の登場に既存の制度が追いつかず、住民の不安が法の枠組みの外に置かれています。
  • 令和8年第2回定例会の一般質問で、この問題をめぐる区の主体的な関与について質しました。 制度が追いつくのを待てない時間軸の中で、基礎自治体である区が何をできるのか、その姿勢を議場で問うものです。
  • 区長は、区として「主体的に関与すべき範囲がある」と認めました。 一方で、協定や要綱の運用強化、地区計画といった規制的な対応については「慎重な検討が必要」とし、踏み込んだ言質は示されませんでした。
  • その上で区長は、日本データセンター協会に対し、同協会が公表した「データーセンター地域共生ガイドライン」の実効性ある取組の推進について協力を求める、と明言しました。 事業者自身がガイドラインを正当性の根拠に掲げ、協会自身も事業者の説明責任不足を問題視している――この二つがかみ合うからこそ、協会を動かすことが事業者を動かす最も現実的な道になります。私が議場で提示したこの方向に、区が踏み出しました。

なぜ、いま一般質問で取り上げたのか

千石3丁目の大規模データセンター計画について、私はこれまで本ブログと委員会で、現在の法令・条例・要綱の枠組みでは、都市型データセンターによる周辺住民の健康と生活環境を守りきれないことを述べてきました。重油の地下貯蔵、低周波音を含む騒音、排熱、そして稼働後の実態が見えにくいことへの不安など、住民の皆さまからは切実な懸念が示されています。

この問題の根っこにあるのは、制度が現実に追いついていないという構造です。たとえば、千石データセンターに設置される非常用発電機は、12台合計35MWという、防災用の非常用発電機としては桁違いの規模です。にもかかわらず、その排ガスには大気汚染防止法の排出基準が適用されません。1987年に設けられた「当分の間、適用しない」という例外規定が、39年を経たいまも「当分の間」のまま残されているからです。

当時の立法者が、これほどの規模・用途・頻度の発電機を住宅地のすぐ隣に置く事態を想定していなかったことは明らかです。データセンターという新しい施設の登場に、既存の制度が追いついていない。これが、住民の不安が法の枠組みの外に置かれてしまう根本の原因です(非常用発電機について詳しくはこちらの記事をご覧ください)。

本来、こうした環境影響への対応は、全国的に統一された基準や評価手法に基づいて、国や東京都が主導してルールを整備すべき課題です。しかし、千石の事業者の公表スケジュールでは建築確認申請と着工が目前に迫っており、国の制度改正や都の条例改正を待っていては間に合いません。

制度が追いつくのを待てない時間軸の中で、それでも区民の生活環境を守るために、基礎自治体である区が何をできるのか。それを議場で正面から問うたのが、今回の一般質問です。

令和8年第2回定例会の一般質問で、千石データセンターをめぐる区の主体的関与を質した

議場で求めたこと

データセンターという、民間が担い、行政の手が直接及びにくい領域であっても、区民の生活と生命に直結する以上、区は傍観せず主体的に関与すべきではないか。この問いを軸に、具体的には次の4点を求めました。

第一に、区の役割認識です。この問題に、区として主体的に関与すべき役割の範囲があるという認識を持っているか。

第二に、制度運用の強化です。着工が目前に迫る中、協定の締結や要綱の運用強化によって、より踏み込んだ対応を図るべきではないか。

第三に、地区計画の活用です。すでにデータセンター立地が進んだ千葉県印西市の例を挙げ、地区計画の見直し等によって、立地や運用を区が主体的にコントロールする手立てはないか。

第四に、稼働後の対応です。環境データの標準化、第三者による検証、稼働後のモニタリング体制の制度化を協定等に位置づけ、実効性ある監視・検証の仕組みを設けるべきではないか。

そして質問の最後に、私はひとつの方向性を示しました。日本データセンター協会が令和8年5月1日に「データセンター地域共生ガイドライン」を公表したことに触れ、この動きを好機と捉え、事業者のみならず業界全体の主体的な対応を引き出していくことも重要だ、と申し上げたのです。

区長の答弁

これらの問いに対し、区はこの案件を区長自らが姿勢を示すべき重要案件と位置づけ、区長答弁として返してきました。

役割認識については、データセンターに係る環境影響への対応は本来国や東京都が主導すべき課題としつつ、現行制度のもとでも地域住民と事業者との調整や情報提供の促進など基礎自治体の役割が求められており、「区としても主体的に関与すべき範囲があると認識している」と、関与を認めました。

一方で、制度運用の強化については、協定や要綱の運用強化による踏み込んだ対応は、法的拘束力を有しない任意の取組であることに加え、現行法令を超える規制は事業者の権利侵害など法制度全般への影響を考慮する必要があることから、「慎重な検討が必要」との姿勢にとどまりました。

地区計画の活用についても、準工業地域を対象に導入の可能性を検討してきたとしつつ、データセンターに係る環境影響の基準や知見が十分に整っていないこと、特定用途のみを対象とした規制が土地活用に影響を及ぼす可能性があることから、「引き続き慎重な検討が必要」「慎重に見極める」との認識が示されました。

稼働後の対応については、環境データの標準化や第三者による検証、稼働後のモニタリング体制の制度化を「地域住民の安心につながる視点であり、これらを事業者との協定に位置付け、監視・検証体制の実効性を確保していくことが望ましい」と、その必要性を認めました。ただし、制度化にあたっては環境基準等の妥当性や実効性に課題があるとして、「慎重に対応すべき」としています。

区長は「協会への働きかけ」を明言した

そして、この稼働後の対応をめぐる答弁の中で、区長は具体的な行動に踏み込みました。

事業者が社会的責任を適切に認識し主体的に対応するよう働きかけるとともに、「全国の事業者を取りまとめる日本データセンター協会に対し、同協会が公表した『地域共生ガイドライン』の実効性ある取組の推進について協力を求めてまいります」 と明言したのです。さらに、同様の課題を抱える他自治体とも連携を図り、地域住民の安全・安心の確保に向けてできる限りの方策を講じる、としました。

率直に申し上げて、私自身、今回の区の姿勢にすべて納得しているわけではありません。とりわけ、協定や要綱の運用強化による踏み込んだ対応について区が慎重姿勢にとどまった点は、私の考えとは異なります。これらが「望ましい」「必要性は認める」とされながら、制度化には慎重、という答弁の構造には、もどかしさも残ります。規制的な手立ての重要性は変わらず、引き続き求めていく考えです。

なぜ「協会への働きかけ」なのか

それでも、私が議場で協会への働きかけを求めたのには、理由があります。着工が目前に迫り、国や都の制度改正を待つ時間がない現実の中で、いま即効性をもって業界を実際に動かしうるのは、業界団体である協会を通じた働きかけだと考えるからです。その判断には、二つの根拠があります。

ひとつは、事業者自身が、ガイドラインを計画の正当性の根拠として掲げていることです。事業者は、5月30日の住民説明会で配付した資料において、東京都・協会・区の各ガイドラインとの整合性を一覧表にまとめ、これを自らの計画の正当性の根拠として示しました。事業者がガイドラインを拠り所にしている以上、そのガイドラインに千石の現場で通用する実効性を持たせることは、事業者の対応を変える最も直接的な道になります。

もうひとつは、協会自身が、事業者の説明責任不足を問題視していることです。協会の代表は、2026年5月15日放送のNHK「首都圏情報ネタドリ!」の中で、事業者が説明責任を十分に果たしていないケースが多いとの認識を示し、データセンターが周辺に与える影響を可視化し、明確に伝えられるようにしたい、という趣旨を語っています。住民の不安が事業者の対応不足に起因するという認識を、業界団体自身が公に表明しているのです。

事業者がガイドラインを正当性の拠り所とし、協会自身もその実効性を高めたいと考えている。この二つがかみ合う以上、協会にガイドラインの実効性向上を働きかけることは、住民の生活環境を守るうえで、最も筋が通り、かつ実現可能性のある道だと考えました。

理想の制度を掲げて時間切れになるのではなく、いま動かせるところから動かす。協会ガイドラインの公表という好機を捉え、業界全体の主体的な対応を引き出すべきだと議場で求めたのは、こうした考えからです。区長がその方向で協会への協力要請を明言したことは、住民の生活環境を守るための、現実的で意味のある一歩だと受け止めています。

注視していく

もっとも、答弁はあくまで答弁です。「協会に協力を求める」と述べたことが、実際にどのような行動として形になるのか。協会がそれにどう応え、千石の現場にどう跳ね返るのか。ここからが問われる段階です。

これだけの時間が経過してなお、住民の生活環境を守る具体的な結果が出ていないことは、重く受け止めなければなりません。住民がこれまで粘り強く声を上げ続けてきたことが、区にこの問題への主体的関与を認めさせ、協会への働きかけを答弁させるところまでつながりました。 問われているのは、その先に、目に見える結果を出せるかどうかです。

区が協会への働きかけを明言した以上、それが具体的なアクションとして形になるかどうか、私も自ら働きかけながら注視していきます。 動きがあれば、改めて本ブログで報告します。

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