HPVワクチンの予診票、なぜ受診勧奨はがきと一緒に送らないのか? ─「誤解を招く」という区の苦しい答弁
本日の予算審査特別委員会で、HPVワクチン接種事業について質疑を行いました。
子宮頸がんは、主に性交渉によるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因で発症します。そのため、ウイルスの感染機会が生じる前にワクチンを接種することが予防の観点から極めて有効です。
現在、小学6年生から高校1年生相当の女子が定期接種の対象となっており(本区では中学1年生になるタイミングで予診票を送付しています)、この対象年齢で接種すれば、子宮頸がんの発症リスクを約9割低減できることが国内外の研究で示されています。まさに「ワクチンが届けば防げるがん」です。
今回の質疑では、この命を守るワクチンの接種率向上に向けた区の「プッシュ型アプローチ」のあり方、目標なき予算執行の問題、そして男性の接種機会における「情報の不平等」について質しました。
論点①:接種を呼びかけるのに「予診票」は送らない矛盾
まず質疑で、学年別の接種率を確認しました。
| 学年 | 対象者数 | 1回目接種率 | 3回目(完了)接種率 |
|---|---|---|---|
| 中学1年 | 2,067人 | 28.6% | 0.8% |
| 中学2年 | 2,094人 | 45.6% | 29.7% |
| 中学3年 | 2,126人 | 57.8% | 22.0% |
| 高校1年 | 2,138人 | 67.3% | 44.4% |
学年が上がるにつれて接種率が上昇しています。本区は毎年7月に未接種者へはがきを送付するなど、プッシュ型の取り組みを続けており、その成果が数字に表れています。
キャッチアップ接種においても、令和7年2月に未接種者へ個別通知を発送した結果、翌月の接種者数が4倍以上に増加しました。「受けてくださいね」という通知が届けば、実際に受けに行く方がいる。これは本区自身の実績が証明しています。
しかし、現在送付されている勧奨はがきだけでは接種ができません。接種には中学1年生の時に送付された予診票と接種券シールが必要であり、数年が経過して紛失していれば、はがきのQRコードから再交付の手続きをしなければなりません。
私は、「あれ、どこ行った?」と予診票を探し、再交付の手続きをするという段階が増えるほど、受けない方(脱落者)が出てくると指摘しました。
初めからはがきと一緒に予診票そのものを再送付すれば、受け取った方はそのまま医療機関で接種ができます。なぜ最も合理的なこの方法を取らないのかと問いました。
区の答弁は、「オンラインで簡単に再交付できる」としたうえで、「一緒に予診票を再送付すると、区が強く接種を促しているという誤解を招きかねない」というものでした。
これはおかしな話です。個別勧奨はがきを送っている時点で、区はすでに接種を促しています。 はがきを送るのに、予診票を同封すると「誤解を招く」というのは理屈が通りません。
はがきを送っているということは、受けてほしいということです。受けてほしいなら、受けられるものを一緒に送るべきです。
高校1年の未接種者は約700人。予診票の送付コストは事業予算4億5千万円の0.1%にも満たない額です。特に定期接種の期限が迫る高校1年生の未接種者に対して、予診票を再送付すべきだと強く要望しました。

論点②:目標なき予算執行と「公表しない」姿勢
接種への働きかけを強化するには、根拠となる「接種率の目標」が必要です。目標がなければ、どこまで届けるべきか、そのために何をすべきかが定まりません。
予算の積算は前年実績の追認にとどまっており、改善の意思が制度に組み込まれていません。目標の設定と半期ごとの実績検証・公表を求めました。
令和7年決算審査特別委員会でも、がん検診の受診率について区の目標が設定されていないことを指摘しています。HPVワクチンも同じ構造の問題です。
区の答弁は「接種を強制できないため目標値は設定しない」「公表することは現時点では考えていない」というものでした。
区民の税金を使って事業を行っているのに、結果としての接種率を公表しないというのは極めておかしな話です。公表と、個人の接種を強制することは全く別の次元の話であり、行政としての説明責任を放棄していると言わざるを得ません。
論点③:男性HPVワクチンの「情報到達のガチャ化」
男性のHPVワクチン任意接種助成についても質疑しました。直近の令和7年12月末時点で、高校1年生男子の1回目接種率はわずか5.3%。女性の67.3%との差は歴然です。
女性の定期接種では対象者全員に区が予診票を送付します。男性の任意接種では保護者が自ら申請しなければ届きません。この「情報到達の非対称」が接種率の差に如実に表れています。
学校を通じた周知について、2年前の厚生委員会で「研究課題」との答弁がありました。その後の取り組みを確認したところ、区は「養護教諭との連絡会で説明した」とのこと。
しかし、養護教諭に説明した後、実際に何校で生徒や保護者に情報が届いたか把握しているかと問うたところ、「把握していない」との答弁でした。
これでは、学校Aでは説明がなされ、学校Bでは説明されないという事態が生じます。接種機会の不平等です。 区の予算で行う事業の周知を養護教諭や学校の判断に丸投げするのではなく、区が責任を持って直接保護者へ届ける体制を整えるべきだと求めました。
おわりに
今回の質疑を通じて問いたかったのは、行政の手続きが区民目線で設計されているか、そして情報が公平に届く仕組みになっているかという点です。
「目標を定め、情報が届く仕組みを作り、届いたかどうかを検証する。」
これは行政の事業として当たり前のサイクルです。国において男性の定期接種化の議論が進む中、区報やSNSでの発信でお茶を濁すのではなく、区民が必要な情報を確実に入手できる仕組みづくりを、引き続き強く求めてまいります。