江東区の物価高騰対策給付はなぜ5,000円なのか? ─区に聞いてもよくわからない給付額の根拠
2月24日、令和7年度予算審査特別委員会にて、新時代の会を代表し一般会計補正予算第5号について総括質問を行いました。今回の質疑では、大きく3つの論点から区の財政運営を問いました。
論点①:101億円の余剰財源──5,000円給付は妥当だったのか
今回の補正第5号では、税収等の上振れにより、当初予定していた基金からの繰入金が約101億円も減額されました。つまり、100億円以上の財源が浮いたわけです。
一方で、第4号補正で計上された全区民への給付額は5,000円相当(予算規模約30億円)。千代田区・足立区・港区など近隣自治体が1万円相当の給付を行う中、本区はその半額にとどまりました。仮に1万円に引き上げても追加コストは約30億円で、それでもなお70億円以上の余裕がある計算です。
「なぜ5,000円なのか」──この問いへの区の答弁は、十分とは言えないものでした。
財政課長の説明は「国の交付金と同程度の一般財源(約20億円)を活用し、逆算的に5,000円を設定した」というもの。
本来であれば、「物価高騰下で区民一人あたりこれだけの負担増が生じている。それを緩和するにはこの水準の給付が必要だ」という積み上げのロジックがあるべきです。しかし実際に出てきたのは、予算枠を割り算したら5,000円になったという話でした。そこに政策的な根拠がもう少し明確であるべきだと感じました。
私はさらに踏み込んで聞きました。「区民から『他区は1万円なのにケチだ』と言われたとき、なぜ7,000円でも6,000円でも1万円でもなく5,000円なのか、論理的に説明できますか」と。これに対する再答弁も、やはり「逆算的に5,000円だった」という繰り返しでした。
結果として、100億円超の余剰が基金の温存に回りました。将来への備えを否定するつもりはありません。しかし、深刻な物価高騰が続く今は、従来の「バランス」感覚のままでよいのか。増収分をすべて貯金に回すのではなく、もう少しフレキシブルに区民生活の支援へ振り向けるべきではないか──この点を強く指摘しました。
区の答弁は「支援と健全な財政運営の両立が重要」。言っていること自体は正しいのですが、100億円の余剰が出る局面で、その「バランス」の重心がどちらに寄っていたかは、数字が物語っていると思います。
論点②:入札不調による約3.6億円の事業停滞
今回の補正では、土木費のうち約3億5,682万円が入札不調による工事遅延に起因する減額でした。南砂の道路改修など、地域住民との約束であるはずの事業が滞っています。資材高騰と人手不足が深刻化する中、これは個別案件の問題ではなく、区の事業執行能力そのものに関わる経営リスクです。
区からは「入札不調発生時は直ちに原因究明・要件緩和を行い再入札している」「令和8年度予算では最新の実勢価格を反映した予算措置を行う」との答弁がありました。
論点③:「お金があれば建つ」時代は終わった
公共施設建設基金へ約68億円を積み立てましたが、中野サンプラザの計画凍結や世田谷区役所の工期遅延など、資金があれば計画通りに建つという前提は崩れています。
先日、池袋西口再開発を手がける三菱地所のプロジェクトリーダーから直接伺った話では、「ゼネコンから手がないと言われればそれまで。大規模プロジェクトほど、相当前から着工順の調整が必要」とのこと。従来の「設計→入札→着工」ではなく、竣工時期から逆算して早期に施工体制のめどをつける「逆算の思考」への転換が不可欠です。
区からは、事業者との意見交換を踏まえた発注時期の平準化の実施と、事業者が長期計画情報にアクセスしやすくするためのホームページ構成変更を予定しているとの答弁がありました。一歩前進ですが、「資金はあるが作れない」事態を回避するには、より踏み込んだ戦略が求められます。
おわりに
今回の質疑を通じて問いたかったのは、有事における財政判断の優先順位です。
100億円超の余剰が生まれる財政状況で、区民への直接支援を5,000円にとどめ、残りを貯金に回すことが「バランスの取れた判断」と言えるのか。そして、「予算をつければ事業は進む」という前提が崩れている中で、建設市場の構造変化に対応した戦略の転換は急務です。
引き続き、区民の暮らしに直結する財政運営のあり方を、現場の声をもとに問い続けてまいります。