江東区議会議員 中島雄太郎

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「水道管破裂」ではなかった ―地震後の江東区清澄の漏水と空気弁のメカニズム

この記事のポイント

  • 8月23日深夜の地震後、江東区清澄二丁目で発生した漏水の原因は、水道管本体の破裂ではなく、付属設備「空気弁」等の不具合でした(東京都水道局発表)。断水はなく、早朝までに復旧しています
  • 2021年10月の同規模の地震でも、都内22か所で空気弁からの漏水が発生。都水道局職員による検証報告(水道協会雑誌・2024年)は、地震時の急激な水圧変動で弁が閉じられなくなるメカニズムを想定しています
  • 同報告によると、都は特定メーカー製の空気弁約900か所の部品を「令和6年度までに交換する」方針を示していました。今回の漏水箇所がこの対象・交換済みだったのかが焦点です
  • 都水道局への確認を進めており、結果はこのブログで続報します

8月23日午前2時00分ごろ、茨城県南部を震源とするM5.9の地震が発生し、江東区では震度4、そして「長周期地震動階級2」を観測しました。私の住むマンションもゆっくりと長く揺さぶられ、家族で目を覚ますことになりました。

その直後、区内の清澄二丁目で道路に大量の水があふれ、一部では「水道管破裂」と報じられました(産経新聞2026年8月23日)。しかし、結論から言うと、水道管本体は破裂していません。この記事では、実際に何が起きたのか、現場確認と一次資料をもとに整理します。

原因は「空気弁」という付属設備

東京都水道局の発表によると、今回の漏水は清澄二丁目のほか中央区日本橋本町三丁目、葛飾区西亀有二丁目の計3か所で発生し、原因はいずれも水道管の付属設備である「空気弁等の不具合」でした。緊急隊の出動により漏水は早朝までに解消し、浄水場等の施設に被害はありません。断水も発生していません。

東京都下水局のXより引用

朝、清澄の現場を確認してきました。漏水地点の路面には「水道空気弁」と明記された蓋があります。普段は誰も気に留めない、あの格子模様の四角い鉄蓋です。

空気弁とは、水道管内に溜まった空気を排出し、工事の際には空気を取り入れるための設備です。空気は管路の高い所に溜まるため、橋のたもとや坂の上の路面によく設置されています。内部にはフロート(浮き玉)が入っており、通常は水圧と浮力でフロートが空気孔に押し付けられて密閉されています。

なぜ地震で漏水するのか

重要なのは、漏水=水道管の破裂ではないということです。

実は、まったく同じことが5年前にも起きています。2021年10月7日の千葉県北西部地震(M5.9・最大震度5強)では、都内23か所で漏水が発生しましたが、水道管本体に破裂や損傷はなく、22か所は空気弁からの漏水でした。今回とほぼ同じ規模・同じタイプのやや深い地震で、同じ設備が同じように漏水したことになります。

この2021年の漏水について、都水道局の職員による詳細な検証報告が公開されています(水道協会雑誌 第93巻第8号、2024年)。

報告によると、地震の1分後に管内の水圧が一時的に低下し、8分ほどで概ね復帰していたことがテレメータの実測で確認されています。そして、地震時の急激な水圧変動を模擬した「急速充水試験」を行ったところ、空気弁からの漏水が再現されました。想定されたメカニズムは次のとおりです。

水圧低下 → フロートが下降 → 水圧回復 → 急速充水 → フロート(弁体)が水流に押し負けて閉じられず漏水

今回も同じ仕組みだったかは現時点では不明ですが、構造としてはこのようなことが起こり得ます。

都は対策まで打ち出していた

この検証報告が重要なのは、対策まで踏み込んでいる点です。

2021年に漏水した22か所のうち20か所は同一メーカー(報告内では「A社」)製でした。急速充水試験ではこの全20台で漏水が再現され、フロート弁体の浮力を高める部品改良が有効であることが確認されています。これを受けて都は、都内のA社製空気弁約900か所の部品を「令和6年度までに交換することとした」と明記しています。

都は約900か所を令和6年度までに交換する方針を示していました。令和6年度は既に終了しており、実際に全数の交換が完了しているのかを含めて、確認を進めています。

そこで、今回の清澄二丁目の空気弁がどちらだったかが焦点になります。

交換済みのA社製だった場合、部品交換しても問題が解決していない可能性を示唆し、対策の有効性の再検証が必要になります。A社製以外だった場合、約900か所を対象とした今回の交換対策ではカバーされない事例ということになり、原因の特定と新たな対策の検討が必要です。仮に交換が未完了だったなら、進捗そのものが論点になります。

どの答えであっても、確認する意味のある問いです。

江東区にとって他人事ではない理由

2021年の漏水22か所のリストには、江東区内の2か所(亀戸3・亀戸4)が含まれています。江東区は今回も5年前も漏水が起きた区です。

今回のようなやや深い地震(深さ約70km)は、首都圏で繰り返し発生しています。2021年にも同規模の地震で江東区を含む都内各地の空気弁から漏水が発生しており、今回も再び同種の設備で不具合が起きました。

都水道局は約16,000か所の空気弁を維持管理しています。管本体の耐震化が進んでも、可動部を持つ付属設備が地震の弱点になり得ることを、今回の事案は改めて示しました。

今後の対応

以下の点について、都水道局への確認を進めます。

  • A社製約900か所の部品交換は令和6年度末までに完了したのか(進捗率・完了時期)
  • 今回漏水した3か所の空気弁のメーカー・交換履歴
  • 交換済みの弁での漏水だった場合、メカニズムの再検証と追加対策の予定
  • 江東区内の交換対象箇所数と交換状況

確認結果は、改めてこのブログで報告します。

最後に ―足元の防災インフラを知る

今回の件で一つお伝えしたいのは、「漏水=水道管の破裂=水道網の危機」ではない、ということです。深夜の道路に水が噴き上がる映像は不安を誘いますが、今回は管本体は無事で、空気弁は本管から切り離して止水できる構造になっており、断水も発生しませんでした。仕組みを知っていれば、次に同じ映像を見たときの受け止め方が変わるはずです。

そして、お近くを歩くときに、路面の「空気弁」の蓋を探してみてください。橋のたもとや坂の上。一度認識すると、意外なほどあちこちにあることに気づきます。私たちの足元には、普段意識しない防災インフラが無数に埋まっています。それを知ることも、防災の第一歩だと思います。

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