江東花火大会2027、保険加入が難しい今、問われるのは開催時期。気象庁20年分のデータで検証
10月6日の区民環境委員会で、江東花火大会が来年度以降、中止に備える保険に加入できない見通しであることを確認してから、約2週間がたちました。
委員会でのやり取りや、保険に入れなくなった経緯は、前回の記事にまとめています。
江東花火大会2027は保険なしの見通し。2年連続中止で、中止なら経費は区の負担に
2026年10月8日
その後、私もVTRで出演してコメントしたテレビ朝日「グッド!モーニング」の放送とネットでの配信に続き、10月14日に東京新聞がこの問題を取り上げました。10月20日には都政新報が区の動きを詳しく報じ、私のコメントも掲載されています。

報道を追ううちに、私は「保険に入れるかどうか」よりも大事な論点があると考えるようになりました。それは、どの時期なら中止のリスクを下げられるのかです。そこで、気象庁の過去20年分のデータを使って、自分で試算してみました。
この記事のポイント
- 保険が補っていたのは、中止で入らなくなる有料観覧席の収入など一部だけ。区の補助金は、中止でも全額使われている
- 区は開催時期の変更へ調整し、約4,500万円の追加予算も検討している
- 気象庁20年分のデータで試算すると、今の8月中旬は土日祝の約4回に1回、夕方〜夜の天候が花火に向いていなかった
- 秋に移しても大きな改善はなく、天候が最も安定しているのは冬だった
報道で見えてきた区の動き
東京新聞(10月14日)によると、区は保険代理店を通じて保険料の見積もりを求めましたが、対応してもらえなかったそうです。担当課長は「加入は難しいとの認識」と話しています。
そのうえで、区は来年の大会について「開催する方向。気象のリスクを減らすため、どの時期がいいのかを検討している」と説明しています(東京新聞)。都政新報(10月20日)も、区が開催日を変更する方向だと報じています。2027年1月の実行委員会までに結論を出す予定で、会場は荒川・砂町水辺公園のまま変えない考えです。
また、保険に入れない場合に備えて、有料観覧席の収入分にあたる約4,500万円を追加で予算計上するかどうかも検討しているそうです(東京新聞、都政新報)。
「保険があれば安心」ではなかった
保険と聞くと、中止になっても損失をカバーしてくれるイメージがあります。しかし、実際はそうではありませんでした。
今年2月の予算審査特別委員会で、区は2025年の大会について、支出の総額は1億8,700万円余だったと答弁しています。中止で観覧席の収入は入らなかったものの、興行中止保険の補填と前年度からの繰越金で、かかった経費はまかなえたとのことです。
ただし、今年6月の区民環境委員会で、区はこうも答えています。
赤字というようなことにはなってございません。しかしながら、区から補助金等でこちら対応してございますけども、そういった補助金等は全て使わせていただいている
つまり、保険が埋めていたのは、中止で消えた有料観覧席の収入などの穴です。区の補助金は、保険があってもなくても全額使われ、花火は上がっていません。
区が検討している4,500万円も、同じ構図です。保険がなくなった分、次に中止になったときに実行委員会が赤字にならないよう、穴埋めの財源を前もって用意しておくものだと私は受け止めています。財源の手当てであって、中止になったときの区民の負担を減らすものではありません。
花火大会の経費は、当日までにほぼ使い終わっています。開催できれば区民の楽しみに変わる2億円近いお金も、中止になれば何も残りません。だとすれば、本当に問うべきなのは、保険に入れるかどうかより、中止になる確率そのものをどう下げるかです。
気象庁20年分のデータで、開催時期を検証してみた
試算の方法
- 気象庁のアメダス「江戸川臨海」(会場から約3km)の観測データを使用
- 2006〜2025年の20年分、土日祝日だけを対象
- 午後3時〜夜9時に、雨がまったく降らず、平均風速が10m/s未満だった日を「花火に向いた日」とした
風速10m/sを基準にしたのは、実際の判断と照らし合わせて妥当だったからです。開催できた2024年8月12日は、この時間帯の最大風速が9.0m/sでした。強風で中止になった2025年8月11日は、最大12.2m/sでした。
月ごとの結果

出典:気象庁「過去の気象データ・ダウンロード」江戸川臨海(時別値)2006〜2025年をもとに中島が試算
分かったこと
1つ目は、今の開催時期の8月中旬は、約4回に1回、夕方〜夜の天候が花火に向いていなかったことです。同じ8月でも、上旬(88%)や下旬(83%)より悪い時期に当たっています。
2つ目は、夏から秋(6〜11月)は、どの月も75〜84%で、大きな差がないことです。全国で花火大会を夏から秋に移す動きがありますが、江東区の会場に限って言えば、天候の面での改善はわずかです。秋は秋雨や台風の時期にも重なります。
3つ目は、天候が最も安定しているのは冬だったことです。12月は89%、1月は92%で、雨も風も少ない時期です。逆に一番悪かったのは春で、4月は72%、5月上旬は68%でした。春は強い南風が吹きやすく、5月上旬に風速10m/s以上になった日は5回に1回ありました。
今年6月の区民環境委員会では、時期の見直しを求める委員の質問に対し、区は「古くから伝統ある砂町の花火大会につきましては、夏にやっていた」として、夏の開催を続ける考えを示していました。その区が、2年続けての中止と保険の問題を受けて、時期の見直しにかじを切ったことになります。
この試算の限界
- あくまで私の試算です。1つの月あたりの土日祝は200日前後で、数ポイントの差はぶれの範囲です。
- 実際の中止は、当日の朝に予報を見て判断しています。予報の段階で中止になる日も含めると、実際の中止率はこの数字より高くなります。
- 雷や川の増水は、このデータでは判定できていません。
- 冬の開催には、寒さで来場者が減る、空気が乾燥して火災対策の負担が増える、といった別の課題があります。
それでも、どの時期を選ぶかで中止のリスクは変わり、その違いはデータで示せることが分かりました。
他の花火大会の動き
足立の花火は、2024年にゲリラ雷雨で直前に中止し、2025年は開催を7月下旬から5月末に前倒ししましたが、強風で中止になりました。今年も5月末に開催し、2年ぶりに花火を打ち上げています。都政新報によると、主催団体は保険料が以前の約5倍の約500万円に上がっても、保険に加入したそうです。
東京湾大華火祭(中央区・港区)は、これまで8月だった開催を10月に移し、11年ぶりに開催します。大田区も、多摩川河川敷の花火大会を、熱中症対策と台風を避けるために8月から11月に移しています(都政新報)。
花火業者でつくる日本煙火協会によると、全国でも、熱中症対策などを理由に夏の花火大会を秋に移す動きが増えているそうです。同協会の専務理事は、江東区に対し、開催に向けた考え方を区民にきちんと説明してほしいと話しています(東京新聞)。
議会で確認したいこと
1. 開催時期を、どのような根拠で選ぶのか
私の簡単な試算でも、時期によって天候のリスクには差がありました。区は、どのようなデータと基準で開催時期を選ぶのか。秋に移すだけでは改善がわずかな可能性もあり、その根拠を示してほしいと考えています。
2. 中止になった場合、区の負担は総額いくらか
2025年度の収支の内訳(区の補助金、保険金、協賛金、繰越金)と、実行委員会の繰越金がいまいくら残っているのかを確認し、保険なしで中止になった場合の区の負担の全体像を示してほしいと考えています。
3. 判断の前に、区民に説明を
区は1月までに結論を出すとしています。決めてから報告するのではなく、中止のリスクと、中止になった場合の負担を、判断の前に区民に示してほしいと考えています。
まとめ
江東花火大会は、区民に長く親しまれてきた行事です。私は花火大会をやめるべきだと言っているわけではありません。
ただ、保険があってもなくても、中止になれば多額の税金が使われ、何も残りません。そして、中止のリスクは開催時期によって変わります。
開催するにせよしないにせよ、中止のリスクと財政負担を区民に示したうえで判断すべきだという私の考えは、委員会で質問したときから変わりません。今回の試算で、その判断に使える材料があることも見えてきました。引き続き、議会で確認していきます。
出典
- 東京新聞(2026年10月14日)
- 都政新報(2026年10月20日)
- 江東区議会 区民環境委員会(2026年6月16日、10月6日)
- 江東区議会 予算審査特別委員会(2026年2月27日)
- 気象庁「過去の気象データ・ダウンロード」江戸川臨海(時別値:降水量、風向・風速、2006〜2025年)