江東区議会議員 中島雄太郎

江東区議会議員|中島雄太郎

ブログ

  1. トップ
  2. >
  3. ブログ
  4. >
  5. 23区の家庭ごみ有料化はなぜ10年後なのか?賛成7区長、「どちらとも言えない」12区長の構造的理由

23区の家庭ごみ有料化はなぜ10年後なのか?賛成7区長、「どちらとも言えない」12区長の構造的理由

3月23日の読売新聞が、23区の家庭ごみ有料化について詳報しました。23区長全員への取材結果が掲載されており、前回のブログで指摘した「誰も最初に手を挙げない構造」が、区長自身の言葉で裏付けられる内容になっています。

■参考リンク
半世紀で処分場満杯、東京23区がごみ有料化検討…「37年度以降に一斉導入」が軸(読売新聞オンライン)

賛成7、「どちらとも言えない」12

読売の取材によると、有料化に賛意を示したのはわずか7区長。過半数の12人が「どちらとも言えない」と回答しました。明確に反対した区長はいません。

注目すべきは、態度を明らかにしなかった区長の一人が漏らしたとされるコメントです。「本音は賛成だが、負担につながる有料化は区民受けが悪い。区長選で『無償化』が争点にされる事態は避けたいと考える区長もいるだろう」。

23区のうち18区で、今年から来年にかけて区長選が予定されています。

なぜ「どちらとも言えない」が過半数なのか

検証委員会は早期の実施を求めています。区長会も「実現に向けた検討を進める」と明文化しました。有料化でごみが減ることは、検証委員会も区長会も認めています。他の自治体の実績からも確認されている事実です。

それでも態度を明確にできないのは、有料化の是非の問題ではなく、選挙の問題です。18区で区長選を控える中、「有料化賛成」と明言する政治的インセンティブがありません。

前回のブログで「一斉開始という前提そのものが、政治的リスクを分散するための仕組みであると同時に、誰も最初に手を挙げなくて済む仕組みでもある」と指摘しましたが、今回の読売の取材結果はそれをそのまま証言しています。

合議制+一斉実施+区長選。この3つが揃えば、動かないのは構造的な帰結です。

なぜ「10年後」なのか──計画サイクルという先送りの装置

読売の記事では「2037年度以降に全区で一斉導入する案が軸」とされています。約10年後です。なぜこんなに先になるのか。

これは清掃一組の一般廃棄物処理基本計画(一廃計画)の改定サイクルと密接に関係しています。一廃計画は5年ごとに改定されます。

今回公表された第6次計画(令和8〜22年度)は、有料化による減量効果を織り込んでいません。次の第7次計画(令和12年度〜)でも、おそらく有料化が実施段階にない以上、反映は困難です。有料化による減量効果が計画に織り込まれるのは、早くても第8次計画(令和17年度〜)。2037年度はその計画期間中にあたります。

つまり、「10年後」という数字は政治判断ではなく、計画の改定サイクルに乗せた結果として構造的に導かれるものです。逆に言えば、今の計画サイクルに乗せる限り、どんなに急いでもこの時間軸になります。

検証委員会が「23区から提案があった実施時期に拘らず、早期にこれらの施策が実施されることを期待する」と提言したのは、まさにこの計画サイクルによる先送りを見越してのことだったと考えられます。計画の改定を待たず、実施すべきだと言っているのです。

検証委員会の青山侑・明治大名誉教授も読売の取材に対し、「合意形成に時間を要するのであれば、一部の区による先行導入も検討すべきだ」と改めて発言しています。

自ら設置した委員会の答申を採用しないという矛盾

ここで改めて確認しておきたいのは、検証委員会は区長会自身が設置した第三者・有識者委員会だということです。区長会が専門家に諮問し、半年・9回の会議を経て出された答申です。

その答申が、早期の実施、「並行して進めよ」「先行実施も柔軟に」と明確に提言しているのに、区長会がそれを採用しない。自ら専門家の知見を求めておきながら、出てきた結論に従わないのであれば、何のための検証委員会だったのか。

この対応を「住民感情に寄り添った慎重な政治判断」と評価する向きもあるかもしれません。しかし、検証委員会の答申は住民感情を無視した机上の空論ではありません。不法投棄対策、戸別収集の課題、区民への丁寧な情報提供の必要性——こうした現実的な課題を踏まえた上で、それでもなお早期に実施すべきだと結論づけたものです。

専門家が現実の課題を織り込んで出した提言を、「区民の理解が得られない」という理由だけで棚上げするのは、慎重さではなく問題の先送りです。

加えて指摘しておきたいのは、この議論のプロセスの不透明さです。検証委員会の答申や区長会の検討経緯は、3月19日の公表まで非公開でした。答申が提出されたのは昨年10月。公表まで約5ヶ月間、都民は議論の中身を知る手段がなかった。

その間、年末に小池都知事の有料化を巡る発言がXでトレンド入りし、猛烈な反発が巻き起こりました。有料化はすべての世帯に影響する政策であるにもかかわらず、なぜ必要なのか、どういう選択肢があるのかという本質的な議論が区民に共有されないまま、反発だけが先行するという状況を生んでいます。

区民の理解が得られないことを有料化先送りの理由にするのであれば、まずその判断材料となる情報を開示すべきではないでしょうか。

江東区の立場

江東区は、新江東清掃工場を1,800トンから1,200トンに縮小する計画の当事者です。この縮小は、23区のごみ処理の「出口」を一手に担ってきた江東区の負担を是正するための長年の悲願です。

しかし、ごみの総量を減らせなければ、12年後の令和20年度には、焼却余力がわずか5%という極めて薄い中での運用を強いられます。人口の想定外の増加や景気回復による事業系ごみの増加など、計画から少し狂っただけでも全量焼却体制の危機を招きかねない水準です。

有料化の議論が10年後まで棚上げされるなら、ごみ減量が進まないまま新江東の縮小だけが先行し、23区全体が綱渡りの焼却体制に突入することになります。

一般廃棄物処理基本計画(第6次)改定原案【概要版】から抜粋

一部には、アンバランスの是正と有料化の議論を切り離すべきだという意見もあります。江東区が有料化によるごみ減量を主張すると、「自分の工場を小さくしたいだけだろう」と受け取られ、23区内の分断を招きかねないという懸念です。

しかし、一廃計画が示す数字は明確です。有料化なしで新江東を縮小すれば、焼却余力は5%まで低下する。この2つの議論は切り離せるものではなく、事実として不可分です。

有料化が必要だという認識は共有されています。問題は「誰が最初に言うか」です。江東区は新江東清掃工場の縮小を実現する当事者として、この議論から逃げるわけにはいきません。

さらなる論点──国の交付金と有料化の関係

なお、清掃工場の建替に際して活用する国の交付金と有料化の関係——有料化の検討が進まないことが交付金の算定に不利に働く可能性——についても、非常に大きな論点があります。

こちらについては、3月26日の区議会清掃港湾・臨海部対策特別委員会での議論を踏まえて、改めて整理する予定です。

区議会の場から、引き続きこの問題を追いかけていきます。

江東区の暮らしに関するご意見・ご相談はお気軽にご連絡ください。

前の記事

23区の家庭ごみ有料化、検証委員会は「早くやれ」と言った。区長会は「引き続き検討」と答えた。