子供と子育て家庭の熱中症予防支援事業、江東区は未実施。11区は保育園に活用
この記事のポイント
2026年第三回区議会定例会の予算審査特別委員会(令和8年度補正予算第2号の審査)で、私は会派を代表して総括質問を行い、東京都の「子供と子育て家庭の熱中症予防支援事業」を江東区が今年度実施しなかった問題を取り上げました。
保育園に子どもを預ける家庭にとって、夏の暑さは子どもの命と健康に関わる問題です。議会での質疑を踏まえ、区民の皆様にご報告します。
- 東京都は今年度、保育園の熱中症対策に1園あたり最大100万円、都が4分の3を負担する補助制度を新設した。遮光ネット、ミストシャワー、スポットクーラーから、外に出られない日に室内で体を動かすための運動用具まで対象になる。
- 都の調査では23区のうち11区が今年度の実施を決めた。江東区は実施しなかった。 都の要綱は補正予算の締切前に確定しており、区は隣接区の実施予定も把握していた。できなかったのではなく、やらなかった。
- 区は「今年の夏の対策としては時期が合わない」と説明するが、都の要綱は今年度中に契約・納品したものを補助対象としており、来年の夏に備えた整備も可能だった。 今年4月以降の購入は遡って対象になる。私は、区の見送り判断は制度の趣旨・運用を十分に踏まえたものではないと指摘した。
- 私は今回の区の判断は間違っていると考える。 同じ23区で同じ制度を使えるのに、区民に必要なものを活用しない判断は、区民の利益に反する。
- その上で来年度に向け、「令和9年4月1日以降に契約・購入したものを補助対象とする」「事前準備を計画的に進め早期に事業開始する」との答弁を引き出した。来年の夏に間に合うかどうか、この答弁を基準に確認していく。
今年の夏は異常でした。
保育園では、朝の暑さ指数を見て「今日は外遊び中止」と判断する日が続きました。園庭に出られない。散歩にも行けない。子どもたちは一日中、室内で過ごす。保育士は、エネルギーの余った子どもたちを狭い部屋でどう過ごさせるか、毎日頭を悩ませています。
熱中症は、子どもにとって命に関わる問題です。体温調節が未熟で、自分で「暑い」と言えない年齢の子もいます。だから園は慎重になる。慎重になるほど、外で体を動かす機会が減る。この夏の保育現場は、そういう板挟みの中にありました。
東京都が動いた
この状況を受けて、東京都は今年度、新しい補助制度をつくりました。「子供と子育て家庭の熱中症予防支援事業」。保育園1園につき最大100万円。都が4分の3を負担し、区は4分の1で済みます。
100万円あれば、何ができるか。園庭に遮光ネットや日よけシェードを張る。ミストシャワーを設置する。スポットクーラーを置く。暑さ指数計を各クラスに配る。そして、外に出られない日に室内で体を動かせるように、鉄棒や跳び箱、運動用マット、ソフトブロックを揃える。天井扇風機の取り付けや遮光シートの貼り付けといった軽い工事も対象です。
当初は「工事費は対象外」「多機能の扇風機はどうなるのか」と現場から不満が出ましたが、都議会の会派を通じて都に届け、7月に対象が明確化されました。子どもの命と健康のために、都が本気で設計した制度です。
11区が使う。江東区は使わない
都の調査では、7月末時点で23区のうち11区が今年度の実施を決めました。隣の江戸川区も入っています。
江東区は、実施しませんでした。9月の補正予算に、この事業は入っていません。
なぜか。区の説明は「今回の補正に計上しても事業開始は10月以降で、今年の夏の対策としては時期が合わない」というものです。
しかし、都の制度は「今年の夏に間に合うか」だけで判断する仕組みではありません。都は6月に補助要綱を確定させる際、「来年度以降に使う目的での購入は認めない」という文言を削除し、「今年度中に契約し、納品されたものを対象」としました。つまり、この夏の対策だけでなく、来年の夏に備えて今年度中に整備することも可能だったのです。しかも今年4月以降に園が買った物品は遡って対象になる。この夏、園が自腹で買った日よけや保冷剤にも補助が出せました。
都の調査では、こうした制度のもとで23区のうち11区が今年度の実施を予定していました。
時系列を見ると、もっとおかしい

- 3月31日 都から実施要綱が届く
- 5月15日 都から補助要綱案。区は都の調査に「実施に向けて検討中」と回答
- 6月2日 区が各保育園に意向調査を開始
- 6月12日 都の補助要綱が確定
- 6月30日 区の補正予算の見積提出期限
- 8月5日 区が他区に聞き取り。江戸川区など隣接区が実施予定と把握
- 8月6日 区長査定。同日、区が各園に再調査を開始
- 8月26日 補正予算案の庁議決定
見積の締切前に要綱は確定していました。区は5月に「検討中」と答え、査定の前日には隣の区が実施すると知っていた。その上で、載せなかった。
区の補正予算の編成方針には「時機を逸することなく」と書いてあります。この事業に関しては、その言葉どおりにはなりませんでした。区内218園。都の補助を全部使えば1億6,350万円。区の負担は5,450万円。子育て応援給付金に8億8千万円を独自財源で出す判断ができた同じ補正予算で、これが載らなかった。
議会で問いました
9月24日の予算審査特別委員会で、会派を代表してこの問題を取り上げました。
私の考えは明確です。今回の区の判断は間違っています。
11区は、この補助金を使って、保育園に通う子どもたちの命と健康を夏の暑さから守る支援に踏み出しました。江東区は、同じ23区で、同じ制度を、同じ条件で使えたのに、使いませんでした。要綱は締切前に届いていた。他区の動きも知っていた。区の負担は最大でも5,450万円で、同じ補正予算で8億8千万円の給付金を独自財源で出す判断ができている。できなかったのではなく、やらなかった。
区民に必要なものが目の前にあり、それを活用する手段があるのに使わない。この判断を、私は区民の利益に反すると考えます。
区の見送り理由にも、私は納得していません。「今年の夏の対策としては時期が合わない」と言いますが、都の要綱では今年度中に契約・納品したものが補助対象で、来年の夏に備えた整備も可能でした。しかも今年4月以降の購入は遡って対象です。私は、区の判断は制度の趣旨・運用を十分に踏まえたものではないと議場で指摘しましたが、区は同じ説明を繰り返しました。
前回6月の補正予算審査で、区は「活用できる国や都の補助金は最大限確保する」と答弁しています。今回の判断が、その言葉とどう整合するのか。私はそう問いました。区の答えは「保育園のニーズを把握した上で予算計上するには日程に間に合わなかった」「合理的であり、方針との齟齬はない」でした。私は納得していません。
それでも、来年度に向けて取ったもの
区の判断を批判するだけでは、来年の夏の保育園は変わりません。だから来年度の実務について4点を問い、二つの答弁を引き出しました。
一つは、来年度に実施する場合、令和9年4月1日以降に契約・購入・工事着手したものを補助対象にする。都の交付決定は申請から4か月かかる運用なので、それを待てば夏が終わります。交付決定を待たずに4月から動ける、という答弁です。
もう一つは、区として事前に準備できることは計画的に進め、早期に事業開始できる体制をとる。年度内に各園への周知や意向確認を済ませる、という趣旨です。
来年度当初予算への計上については「都の動向を注視しながら」と明言を避けました。ただし、仮に来年度実施する場合には、4月1日以降の購入・工事着手を補助対象とし、事前準備を進めて早期に事業開始するという具体的な運用は確認できました。区は「4月以降に購入・工事をしても夏までに対応できる」とも述べています。来年の夏に間に合うかどうか、この答弁を基準に確認していきます。
二度と同じことを起こさないために
今年度、都の補助制度を活用して整備を進める11区と、少なくとも今回の補正では実施しなかった江東区との間には、整備時期に差が生じることになります。
私が議場で最後に求めたのは、この一件を繰り返さないことです。国や都が年度途中に新しい制度をつくったとき、「来年度の当初予算で」を前提にするのではなく、制度の趣旨、区の負担、現場のニーズ、実施できる期間を見て、必要なものは補正予算で迅速に取り込む。活用できる国や都の補助金は、区民の利益のために最大限活用する。当たり前のことを、当たり前にやってほしい。
1月の予算案、年度内の周知、4月の申請開始、夏前の整備完了。一つずつ確認していきます。