8割は早く、2割は遅れる ―江東区の物価高騰対策とマイナンバーカード活用の課題
物価高騰対策としての今回の支援事業をどう見るか
物価高騰が続く中、江東区が実施する今回の支援事業は、マイナンバーカードを活用し、18歳以上の全区民を対象に5,000円相当を支給するものです。
子育て世帯への上乗せ支援も含め、「全区民」を対象に生活を下支えしようとする姿勢は、まず率直に評価すべき点だと考えます。

マイナンバーカードを活用することのメリット
マイナンバーカードを活用することで、申請から給付までを迅速かつ確実に行えるというメリットがあります。
オンライン申請が可能で、事務処理の効率化や誤支給防止につながる点は、行政としても合理的な選択です。
江東区のマイナンバーカード保有率の現状
最新の公表資料によれば、江東区のマイナンバーカード保有率は、令和8年1月末時点で81.0%となっています。全国平均と同程度であり、東京23区の中では上位の水準です。
この数字を踏まえれば、マイナポイントを活用した今回の仕組みが、多くの区民にとって早期の支援につながる設計であることは理解できます。

見過ごせない「約2割」の区民への影響
一方で、残る約2割の区民はマイナンバーカードを保有していないため、マイナポイントによる申請ができません。
その結果、申請期間終了後に商品券が郵送される流れとなり、支給時期が7月以降になる方が出てきます。
今回の事業は、あくまで「物価高騰対策」です。日々の生活費の負担が増す中で、支援が数か月遅れることの影響は決して小さくありません。
マイナカード未保有者は支援が必要な層と重なりやすい
マイナンバーカードを持っていない方には、高齢者やデジタル手続きに不安を抱える方が多く含まれます。こうした方々は、むしろ支援をより早く必要としている層でもあります。
制度の設計上、結果として「支援が必要な人ほど遅れる」構造になっていないか、慎重に考える必要があります。
議会で提案された代替案
議会では、こうした課題を踏まえ、
・マイナンバーカード未保有者も同時期に申請できる仕組み
・区が把握している未保有者に対し、早期に商品券を発送する方法
といった提案が行われました。
区が示した「二重支給リスク」という判断
これに対し、区は「二重支給のリスク」を理由に、これらの案を採用しませんでした。給付事業において不正や重複を防ぐことは重要であり、制度の安全性を重視する考え方自体は理解できます。
それでも問われる「スピード」という視点
ただし、物価高騰が深刻さを増す中では、制度の安全性だけでなく、「いかに早く支援を届けるか」という視点も同じくらい重要だったのではないでしょうか。
特に、支援が遅れることになる約2割の区民に対して、どうすれば少しでも早く支援を届けられるのか。その点について、もう一歩踏み込んだ検討があってもよかったと感じています。
今回の制度設計にはマイナンバーカード普及の狙いもある
今回の支援事業がマイナンバーカードを前提とした仕組みになっている背景には、単に事務の効率化だけでなく、マイナンバーカードの普及を進めたいという狙いもあったと考えられます。
実際、カードを保有していればオンラインで申請でき、早期に支援を受け取れる一方、未保有の場合は手続きが限られ、支給も後ろ倒しになります。
このように、「持っている人は早く受け取れる」「持っていない人は時間がかかる」という差が生じる設計は、結果としてマイナンバーカード取得を促すインセンティブとして機能します。
制度の裏側に、デジタル化・カード普及を進めたいという政策意図が含まれていること自体は、決して不自然なことではありません。
それでも優先されるべきだったのは物価高騰対策としてのスピード
マイナンバーカードの普及を進めること自体を否定するものではありません。ただし、今回の事業はあくまで「物価高騰対策」として位置づけられています。
その性格を考えれば、デジタル推進の効果よりも、支援を必要とする人にいかに早く届けるかという点が、より強く優先されるべきだったのではないでしょうか。
特に、マイナンバーカード未保有により支援が遅れる約2割の区民に対して、どうすれば少しでも早く支援を届けられるのか、その点をもう一歩踏み込んで考える余地はあったと感じています。
投稿者:江東区議会議員 中島雄太郎