避難所Wi-Fiの携帯回線切替──冗長性の後退を指摘し、衛星通信二重化と実機テストを提案
目的
拠点避難所公衆無線LAN維持管理事業(令和8年度予算約5,009万円)で予定される、バックボーン回線の固定回線(フレッツ光)から携帯回線への切替えの妥当性を検証した。令和6年度予算審査特別委員会での指摘(200Mbps回線の能力不足・断線リスク・衛星通信の提案)を踏まえた継続質問。
質問
- 2年前の指摘を踏まえ、今回の予算でどのような変更を行うのか
- 携帯基地局が被災すれば避難所Wi-Fiも使えず、基地局が無事なら区民は自分のスマートフォンで通信できる。「使えるときには必要ない、必要なときには使えない」構成ではないか
- フレッツ光が持っていた携帯網から独立したバックアップ機能が失われ、通信の冗長性がむしろ後退するのではないか
- 都から配備されたスターリンクの検証状況と、衛星通信との二重化による回線独立性の確保
- 契約前に実際の拠点避難所で実機を用いた通信テストを実施し、結果を議会に報告すべきではないか
答弁
変更内容(地域防災担当課長)
断線や設備被害の影響を受けやすい固定回線からモバイル回線への切替えを予定し、Wi-Fi 6・オープンローミング対応の可搬型アクセスポイントを整備する。被災状況に応じて柔軟に設置場所を変更できるとした。
単一障害点・冗長性
携帯基地局被災時の利用可否は「重要な視点」と認識を示した上で、固定回線の独立性に比べ通信の冗長性の観点では課題が残ると認めた。一方、能登半島地震以降の事業者間連携や移動基地局車等の復旧体制強化、避難所運営での役割を理由に、現時点では有効性があるとの答弁。
衛星通信(スターリンク)
令和6年度に東京都から1台が本区に配備され、防災センター屋上で接続テスト等を実施。地上インフラに依存しない衛星通信として一定の有効性と強靱性を確認したと答弁した。携帯回線と衛星通信の併用により冗長性が確保される点は区としても認識しているとしたが、避難所への展開は引き続き調査研究するとの答弁にとどまった。
契約前の実機テスト
建物構造による電波減衰、周辺の電波環境、多数同時接続時の実効速度など、災害時の運用に直結する検証は必要と認め、契約前の実機テスト実施に向けて事業者と調整する、検証結果は議会にも報告できるよう検討を進めると答弁した。
結果
区は、モバイル回線への切替えで通信の冗長性に課題が残ることを認め、契約前の実機テストの実施に向けた事業者との調整と、議会への結果報告の検討を答弁した。衛星通信との二重化は調査研究の段階にとどまっており、実機テストの結果と併せ、引き続き委員会で確認していく。
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※ 江東区議会会議録より引用。読みやすさのため改行・句読点を一部調整しています。
次に、拠点避難所公衆無線LAN維持管理事業について伺います。
令和6年度の予算審査特別委員会において、私は本事業について質問いたしました。当時、拠点避難所69か所にフレッツ光の200メガbps回線を導入し、年間3,500万円、1拠点当たり年間50万円のコストをかけていました。私からは、200メガbpsでは200台の同時接続は到底不可能であること、そして、大規模災害時には電柱倒壊や光ファイバーの断線により回線自体が使えなくなるリスクがあることを指摘いたしました。防災課長からは、通信手段の多様化は重要であり、衛星通信サービスについてもコスト面を含め調査研究するとの答弁をいただいております。
今回の予算案では、本事業に約5,009万円が計上され、オープンローミング対応の可搬型Wi-Fi機器を整備するとあります。2年前の指摘を踏まえ、今回どのような変更を行うのか、回線と機器構成について伺います。
82:
◯地域防災担当課長 今回の変更内容についての御質問のうち、まず回線につきましては、物理的な断線ですとか設備被害の影響を受けやすい固定回線から、より迅速に設置・移設が可能なモバイル回線への切替えを予定しております。これによりまして、配線工事を伴わず、施設の被災状況に応じた柔軟な運用が可能になるものと考えております。
また、機器の構成につきましては、可搬型で設置性の高いWi-Fiアクセスポイントへの変更を予定してございます。最新規格でありますWi-Fi6やオープンローミングに対応した、災害時により多くの避難者が安定的に利用できるアクセスポイント環境を整備することを想定しております。
以上でございます。
83:
◯中島雄太郎委員 ありがとうございます。Wi-Fi6対応やオープンローミング対応といった機器のアップデートについては評価いたします。しかし、バックボーンとなる回線をフレッツ光から携帯回線に切り替えるという判断については、根本的な疑問が残ります。
この事業は、大規模災害時に拠点避難所で区民が通信できる環境を確保するためのものです。
そこで伺いますが、大規模災害が発生して、携帯基地局が被災し携帯通信が途絶した場合、このホームルーターも同じ携帯回線ですから当然使えなくなります。避難所のWi-Fiも機能しません。一方、携帯基地局が無事で携帯通信が使える状況であれば、避難所に来た区民は自分のスマートフォンで通信ができます。ですから、わざわざ避難所のWi-Fiに接続する必要性は低いです。私自身、携帯通信のホームルーターを実際に設置して使用した経験がありますが、数人で使う分にはともかく、拠点避難所で多数の避難者が同時に使用するような環境に耐えるものではありません。これはカタログスペック上の話ではなく実際に使ってみての実感であります。つまり、このモバイル回線を使用する構成は、使えるときには必要ない、必要なときには使えないということになるのではないでしょうか。区の見解を伺います。
84:
◯地域防災担当課長 携帯基地局が被災した場合のモバイル回線の利用可否につきましては、重要な視点と認識しております。一方で、能登半島地震を踏まえまして、令和6年以降、携帯電話事業者間の垣根を越えた連携が強化されておりまして、大規模な災害が起きた際には、移動基地局車や可搬型基地局などを使ったネットワークを応急復旧させる作業が行われるなど、事業者の復旧体制も年々強化されているところでございます。
また、避難所Wi-Fiにつきましては、避難所運営に必要な行政情報の共有といった避難所運営の円滑化を図る役割も担ってございます。中島委員御指摘のモバイル回線が完全に途絶した場合には利用できなくなる。そういった可能性はございますが、災害時の復旧体制ですとか、避難所における運用面を踏まえまして、現時点では有効性があるものと考えてございます。
以上でございます。
85:
◯中島雄太郎委員 ありがとうございます。さらに指摘いたします。現行のフレッツ光は確かに200メガbpsと貧弱ではありました。しかし、固定回線であるフレッツ光は携帯基地局とは独立した通信インフラであります。大規模災害で携帯回線が輻輳し、区民のスマートフォンがつながりにくくなったとしても、光回線が物理的に断線していなければ、避難所のWi-Fiは別系統として機能し得ました。つまり、現行の構成には、携帯網がダウンした際のバックアップとしての意味があったのです。
ところが、今回の計画でバックボーンを携帯回線に切り替えれば、避難者のスマートフォンも避難所のWi-Fiも同じ携帯基地局に依存することになります。通信手段が単一の障害点に集約されてしまうわけです。これは5,000万円をかけてアップグレードしたつもりが、災害時の通信の冗長性をむしろ後退させていることにはならないでしょうか。機器のスペック向上に目を奪われて、バックボーン回線の独立性という本質を見落としているのではないでしょうか。区の認識を伺います。
86:
◯地域防災担当課長 今回、可搬型機器とモバイル回線を中心とした構成とすることで、避難所の被災状況に応じて柔軟に設置場所を変更できる点ですとか、固定回線の敷設、また、保守に要する時間と費用を削減できる点などのメリットもございます。
一方で、固定回線が持つインフラとしての独立性に比べまして、通信の冗長性の観点では課題が残るものと認識してございます。このため、今後も災害時の通信手段の多重化に資する手法ですとか、サービスについて継続して情報収集するとともに、他自治体の取組についても調査研究を進めてまいります。
以上でございます。
87:
◯中島雄太郎委員 2年前、私は衛星通信、具体的にはスターリンクの導入を提案いたしました。当時、防災課長からは、東京都が令和6年度予算にスターリンクの整備費を計上しており、本区にも配備される、コスト面も含め調査研究するとの答弁がありました。まず、東京都からのスターリンクの配備状況と、この2年間の調査研究の結果を伺います。
88:
◯地域防災担当課長 スターリンクにつきましては、令和6年度に東京都より1台が本区に配備されておりまして、防災センターの屋上で設置準備ですとか動作確認、また、接続テストを実施しております。これらの検証によりまして、地上インフラに依存しない衛星通信として災害時に一定の有効性と、また、強靱性を有することは確認をしているところでございます。
以上でございます。
89:
◯中島雄太郎委員 ありがとうございます。区としても衛星通信の有効性は確認しているとのことでした。
昨年の木場公園での江東区総合防災訓練において、私自身もKDDIの災害用スターリンクに実際に自分のスマートフォンを接続し、通信速度の測定を行いましたが、約40メガbpsの速度が出ていました。本部と現場の連絡、写真送付、情報発信といった緊急通信には十分な性能です。ですから、これらはバックアップ回線として十分に実用に耐えるものです。
先ほど指摘したとおり、今回の計画では、フレッツ光が持っていた回線の独立性が失われます。その穴を埋められるのが通信インフラに一切依存しない衛星通信です。今回の携帯回線への切替えを行うにしても、衛星通信との二重化を図り、回線の独立性を確保すべきと考えます。区の見解を伺います。
90:
◯地域防災担当課長 携帯回線と衛星通信の双方を併用することで通信手段の独立性が高まり、災害時の冗長性が確保される。そういった点につきましては区としても認識しているところでございます。
現状、区が保有するスターリンク1台につきましては、災害対策本部での利用を想定しているところですが、避難所における通信環境の強化に向け、スターリンクを含む衛星通信の位置づけですとか、活用の可能性について、引き続き情報収集及び他自治体の取組の調査研究を進めてまいります。
以上でございます。
91:
◯中島雄太郎委員 最後に、具体的な提案をいたします。
今回導入予定の可搬型アクセスポイントセットについても衛星通信についても、契約の前に実際の拠点避難所において実機を用いた通信テストを行うべきです。カタログ上の理論値ではなく、実際の避難所の建物構造や周辺環境の中でどの程度の通信速度が出るのか、同時接続時にどこまで実用に耐え得るのか検証が必要です。区民の命に関わる災害時の通信インフラです。カタログスペックを信じて契約ありきで進めるのではなく、実機テストの結果を踏まえ、最善の通信環境を整備すべきです。契約の前に、実際の拠点避難所で実機を用いた通信テストを実施し、その結果を議会にも報告すべきと考えますが、区の見解を伺います。
92:
◯地域防災担当課長 可搬型のアクセスポイント及び衛星通信につきましては、カタログ上の仕様のみならず、実際の避難所環境における実効性能を把握することは重要であると認識してございます。区といたしましても、建物構造による電波減衰の状況ですとか、周辺の電波環境、さらには多数同時接続時の実効速度など、災害時の運用に直結する観点での検証は必要と考えております。このため契約前の段階で実機を用いたテストを実施することにつきましては、事業者との調整を図ってまいります。また、検証結果につきましては、議会においても適切に御報告できるよう、今後検討を進めてまいります。
以上でございます。
93:
◯中島雄太郎委員 ありがとうございます。実機テストの実施と議会への報告をお願いいたします。拠点避難所の通信環境は区民の命に直結するものですので、最善の整備をよろしくお願いいたします。
以上で質問を終わります。
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